「ポリアモリー」という言葉をご存知だろうか。一対一の関係を前提とした恋愛・結婚をめぐる規範(モノガミー)に対し、複数人との交際を前提とした性愛のありかたを指す。本書は大学院で人類学を専攻する著者が、歴史的背景・当事者たちのデビューのきっかけ・交際のルールなど、文献・現地調査をもとに、ポリアモリーの生態を多面的に描き出した一冊だ。
ポリアモリーは1960年代、性を夫婦間に限定する社会規範を疑問視する「性革命」という運動から始まった。と聞くと、とんでもない自由人たちをイメージするかもしれない。しかし、著者いわくポリアモリストの特徴は「白人・中産階級・高学歴」。アンケート調査によれば回答者の半数近くは結婚しているなど、実際はごく身近な存在なのだ。
ポリアモリーを「挑戦的」と捉えていた著者は調査を経て、一対一の関係を継続させるモノガミーこそ「大変な挑戦」と考えるに至ったという。対象者とのやりとりを綴ったフィールド・エッセイも面白く、人類学的調査の魅力を堪能できる。
※週刊朝日 2015年8月7日号