AERA 2023年4月3日号

■多様性を尊重する

 松沢さんは「たくさんのファンがいる分、さまざまな才能や知識を持ち合わせた人々が集まっていて、それを無償で共有してくれる」と語る。

 例えば字幕だ。メンバーたちが話す言葉は世界中のARMYによってほぼリアルタイムで翻訳され、SNSで共有される。

 松沢さんは、「メンバーの言葉をダイレクトに理解したい」という一心で韓国に留学したが、留学してから、ARMYとのつながりも深くなった。昨年10月に釜山で開かれたコンサートは、チケットが取れなかったため、会場近くのライブビューイングで楽しんだが、SNSを通じて知り合ったARMYをソウルの自宅に泊めて交流した。SNSを介して、留学経験をARMYたちに語ったこともある。

 松沢さんの「推し」はJUNG KOOKだが、それ以前に「BTSとARMYのファン」だ。BTSとARMYは、多様性について考え、尊重する姿勢も教えてくれた。BTSの曲の中には、手話で振り付けた「手話ダンス」が登場するものもある。また、コンサートでは手話通訳が配置される。これはARMYによる要望の結果でもある。

「私の知見を広げてくれたBTSとARMYには感謝しかありません。私も、小さくても彼らを照らすひと筋の光であり続けたいです」

(ライター/成川彩=ソウル)

AERA 2023年4月3日号より抜粋

[AERA最新号はこちら]