それまでのキャリアを見直し、韓国に留学する──。コロナ禍でのBTSとの出会いが、人生の転機になった人がいる。フォトグラファーの松沢美緒さんもその一人だ。彼女は何に惹かれ、海を越えたのか。AERA 2023年4月3日号から。
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フォトグラファーの松沢美緒さん(35)は、昨年6月からソウルの延世(ヨンセ)大学に留学している。きっかけは、BTSだ。2020年に世界的なメガヒットを飛ばした「Dynamite」で彼らを知った。
世界的なコロナ禍で、先の見えない状況に多くの人が疲弊していたころだ。松沢さんはフリーランスでフォトグラファーを続けながら、料理人を目指して修業を積んでいた。飲食店に勤務していたが、人員削減によって負担が増え、心身ともに疲れ果てていた。そんな中、たまたま耳に入ってきたのがBTSの「Dynamite」だった。
「明るく軽快なディスコサウンドが心地よく、無限リピートして聴いていました」
同じころ、日本の音楽番組でBTSのパフォーマンスを初めて見て、衝撃を受けた。
──なんて楽しそうに歌って踊る人たちなんだろう。
「BTSのメンバーたちもツアーが中止になったりして苦しかったはずなのに、活動の足を止めずに、ファンとオンラインでつながって、希望と癒やしを届けてくれていました」
松沢さんは寝る間も惜しんでBTSについて調べ、未見のコンテンツを追った。
社会性のある歌詞や2018年9月にニューヨークの国連本部で行ったスピーチを知り、心を打たれた。その背景にある歴史や政治を学ぶきっかけにもなった。
ARMY(BTSのファンの呼称)の存在も大きかった。BTSの公式YouTubeチャンネル「BANGTANTV」の登録者数は約7400万人、公式インスタグラムのフォロワー数は約7250万人で、世界中のARMYは「ドイツの人口(約8300万人)に匹敵する」とされ、「史上最強のファンダム」とも言われる。