そもそもニュースサイトになぜコメント欄が必要なのだろうか。
メリットの1つに、情報の多角的な理解やコミュニティの活性化への寄与がある。実際、Yahoo!ニュースを運営するLINEヤフー社は、「ニュースをより深く多角的に理解するための助けになること」 や「健全な言論空間創出」を目的にコメント欄を設けていると述べている。
また、コメント欄は、読者が自らの意見を表明し、他者との対話を通じて新たな視点を得る場としても機能している。この相互作用は、デジタル時代における公共的な議論の場の一形態として重要であり、社会における意見の多様性と包容性を促進する。
さらに、Yahoo!ニュースでは公式コメンテーター制度があり、専門家や著名人によるコメントがなされている。これは一般の読者に対して、専門的な知見や新たな視点を提供している。
専門家によるコメントは、Yahoo!ニュースに限らず、日経新聞や朝日新聞などのマスメディアのニュースサイトでも見られるため、その意義がうかえる。読者が単なるニュースの消費を超えて、アクティブな情報の探究者となることを促しているといえよう。
誹謗中傷、誤情報…指摘される問題点
一方、冒頭に述べた通り、ニュースサイトのコメント欄には多くの問題も指摘されている。
特に大きいのが、誹謗中傷やヘイトスピーチの問題だ。記事内で取り扱われている人を侮辱したり差別したりするようなコメントが散見される。対象となるのは、著名人から一般人までさまざまだ。前述したように裁判に発展したようなものもある。
また、2021年に発生した、京都府にある在日コリアンが集住する地域に放火した事件では、被告はYahoo!ニュースコメント欄で誤った情報を収集し続けており、さらに放火によってコメント欄のユーザにヒートアップした言動を取らせようとしたと動機を語っている。
ほかにも、社会の分断の加速がある。
コメント欄での激しい意見の衝突が、異なる見解や立場の読者間での対立を激化させ、共感や対話の代わりに敵対感を生むことがある。コメント欄は多様な意見を知るために設けられているが、そこで対立が生まれて極端な意見同士が衝突し、議論ができなくなると、社会的な分断を深め、むしろ相互理解と和解の努力を薄れさせるといえる。