例えばYahoo!ニュースでは、議論の活発化を促すために、2018年から建設的コメント順位付けモデルを導入している。これはAIによって、「客観的で、必要であれば根拠を提示している」「新たな考え方や解決策、見識を提供する」などの条件を満たす建設的なコメントをスコアリングし、スコアが高いものを上位表示させる技術である。
さらに、コメント欄に投稿する場合には電話番号登録が必須となるような措置が2022年に導入された。その結果、施策後には新たに投稿停止措置を受けるような悪質なID数が56%も減少したようだ。また、不適切なコメントを投稿しようとして投稿者に警告が表示される回数も、22%減少した。
しかし、これらの対策も完璧ではない。
侮辱的なコメントは散見されるし、前述したようなアテンション・エコノミーの問題は依然として残る。誹謗中傷とはいえないまでも、非常に極端な言説や、陰謀論や誤情報の拡散も起こっている。
コメントを意味のあるものにするには
読者がニュースをより深く多角的に理解するための助けになるようにという目的を果たすならば、継続的な改善と実装を繰り返していくことが求められる。その際には、サイトの運営側によるモデレーションが恣意的にならないように、常に対策の内容や削除件数などについて透明性を確保することが重要だ。
さらに、Yahoo!ニュース以外にも多くのコメントを投稿できるニュースサイトが存在しており、それらの多くのウェブサイトでは対策がほとんどなされていない。誹謗中傷やヘイトが野放しのサイトもある。
各プラットフォーム事業者が言論の場を提供する主体として、責任をもって改善策を検討するとともに、ベストプラクティスを共有し、各事業者が有効な対策を実装していくことが求められるだろう。(山口 真一 : 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教)