イスラエルによる空爆で破壊されたガザ地区南部のラファ=2023年12月12日(ロイター/アフロ)
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 パレスチナ自治区ガザで、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が続いている。ガザ問題の解決をするためにはどうすればいいのか。防衛大学校名誉教授・立山良司さんに聞いた。AERA 2024年1月1-8日合併号より。

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 イスラエルとハマスの戦闘が激しさを増しています。イスラエルが攻撃を停止する兆しはいまのところ全くありません。

 10月7日のハマスのテロがイスラエルに甚大な被害をもたらし、250人の人質も取られた。それを察知できなかったイスラエルの政府、軍、情報機関は大失態です。それをカバーするために「ハマスを壊滅する」というスローガンを掲げて攻撃を開始しましたが、そのスローガンが軍事力で本当に達成できるかというと別問題。政治的スローガンと現実とのギャップがいま、どんどん拡大していて「戦争をやめられない状態」になっていると見ています。

 ハマスとしては、いまは「生き残り」が最大の目的。人質の小刻みな解放というカードを使って、戦闘休止、あるいは停戦を実現しようとするでしょう。

 最初はイスラエル支持を鮮明にしていた西側諸国の姿勢には、変化が見られます。注目されるのはアメリカの出方です。

 アメリカという国には、9.11同時多発テロ以来ずっと、「テロとは徹底的に戦うのだ」というエートス(習性)があると思います。バイデン政権も同様で、それゆえに戦闘開始以来の演説では相当に厳しい言葉でハマスを攻撃していますし、テロと戦うイスラエルは何が何でも支持する。国連でもイスラエルの攻撃に反対する決議案には拒否権を発動するし、大量の武器弾薬を送り込んで援助もする。

 ただ一方で、「選挙対策」も考えざるを得ません。とくに民主党支持者からの支持率が下がり、政権内でも「イスラエル支持はやめるべき」という数百人からの書簡が出されるなど、足元からその支持が崩れている。その意味では「早く戦争を終えてほしい」という意識もバイデン政権にはあり、「テロとは戦え」のエートスと矛盾した状態になっている。いまは、大統領補佐官のサリバンや国防長官のオースティンがイスラエルに入り、頭に血が上っているネタニヤフ政権の幹部を説得しようとしている段階なのだろうと思います。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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