広大なアフリカ大陸のうち25カ国を訪ねてきた、フリーランスライターで武蔵大学非常勤講師の岩崎有一さんが、なかなか伝えられることのないアフリカ諸国のなにげない日常と、アフリカの人々の声を、写真とともに綴る。
アフリカ道路事情の2回目は、道が網の目のように張り巡らされた西部アフリカでのお話。日本ではあまり気にも留めないかもしれない道のこと、そして舗装道路がいかに大切なものかが感じられるかもしれません。
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前回のアフリカ道路事情(1)でお伝えした、見渡す限り砂の世界が続くサハラ(砂漠地帯)から一転、セネガルやガーナなど西部アフリカの国々では、道が網の目となって地域全体を覆っている。
ほとんどの主要道は舗装されており、残された未舗装路も、舗装化があちこちで進められている。長距離を移動中に道路工事の現場を目にしないことは、ほとんどない。
一国内だけでなく、隣接した国々へ向けても、道の網は広がっている。様々な物資を載せたトラックが港から内陸国へと向かい、内陸国で生み出された産品はまた、トラックで港へと向かう。国境を越える長距離バスは、出稼ぎや出張、里帰りのために隣国へと向かう人々を乗せて、毎日運行している。人と物を載せた車が隅々まで絶え間なく行き来する西部アフリカの道は、この地域を支える血管そのものと言えよう。私もこれまで、街から街へ、国から国へと、長距離バスやタクシーを使って移動してきた。
道路状況は常に進化を続けている一方で、20年前も今も、外国人の間では、西部アフリカの国々での移動はしんどいと語り継がれている。5人乗りのセダンに9人乗せられたとか、1台のハイエースに20人すし詰めになったなど、およそ快適さを感じられない話ばかり。また、乗客で席が埋まるまで車が出発することはなく、やっと出発しても故障のために途中下車を余儀なくされるなど、まるで時間が読めない。隣り合わせた乗客との一期一会の出会いは楽しいものの、西部アフリカでの移動を思うと、私も小さく溜息が出る。
近距離間を結ぶ小型バスやタクシーによる移動のしんどさは今も変わらないが、大都市間を結ぶ長距離バスの様相は、ここ数年の間にだいぶ変わってきている。日本国内を走る大型観光バスと変わりの無いタイプの車両が、時速100キロ前後で砂埃を立てながら疾走していく風景が、広く見られるようになってきた。定員オーバーはせず、車内には空調があり、一定の高い速度で走行を続けられ、故障で止まることもあまりない。運賃は事前にチケットを購入する際に支払うため、値段の交渉をする必要もない。これまでの乗り合いバスやタクシーと比べると、画期的にストレスフリーな移動手段といえよう。
時間管理も、なかなか徹底している。
2年前にマリからブルキナファソへ向かうバスのチケットを購入しようとした際、複数のバス会社が運行していたため、私はどのバスを選ぶべきか迷っていた。
現地在住の友人に相談すると、「バニ・トランスポートのバスが一番。厳格に運行しているからね。朝7時に出発と言ったら、7時ちょうどに出発する。お客が一人しか乗っていないのにバスが出発した話を聞いた時には、たまげたよ」と、バニを強く推した。
集客よりもダイヤを優先する哲学に感動した私は、迷わずバニのチケットを購入。翌朝6時50分、バスは確かに定刻通りに出発。友人に感謝しつつ、街を後にした。
あまりにあっけなくバスが出発したことに物足りなさすら感じられたが、座席下の貨物スペースを見ると、そこはアフリカ。直径1メートルほどの洗い桶にはじまり、束ねられたタロイモ、小型バイク、米俵ほどの大袋に詰められたメイズ(白とうもろこし)、脚を縛られた生きた鶏など、生活感あふれる積荷で隙間がない。持参した洗い桶で赤ちゃんを洗ったり、向かった先で鶏をさばいてご馳走をつくったりと、積荷からは乗客の暮らしぶりが次々と連想させられた。
「マリ・バマコ発、ブルキナファソ経由、トーゴ・ロメ行き」「コートジボワール・アビジャン発、ガーナ・トーゴ・ベナン経由、ナイジェリア・ラゴス行き」など、国境を幾度も超える国際長距離バスも、数多く運行されている。物の移動も人の移動も、これからますます活発になっていくにちがいない。