吉高由里子演じる紫式部が主人公となる今年の大河ドラマ「光る君へ」。波瀾(はらん)万丈の戦国時代から、舞台は一気にスローな平安時代に移ったが、その平安時代にドはまりしている人がいる。このドラマ「光る君へ」や、源氏物語、枕草子などの平安文学で出合う「会ふ」から「をし」まで、1576の用語を解説した『平安 もの こと ひと事典』の著者の砂崎良(さざき・りょう)さんと、監修者の承香院(じょうこういん)さんだ。
ふたりはいつ、何をきっかけに「平安沼」にハマったのか。
――承香院さんは平安のリアルを実践しながら研究していると聞いていましたが、本当に平安の装束で来てくださるとは!
承香院 はい。今日はかなり略装で、時代も少し下ったものなのですが、できるだけ、このような装束で過ごすようにしています。時にはこれで宅配便も受け取ります。妙な勧誘もドアを開けたとたん、パタンと閉めて帰っていきます(笑)。もちろん今日も自宅からこれで電車に乗ってここまで参りました。
――まずお二人が、平安沼にハマったきっかけから。
砂崎 これは承香院さまの話がおもしろいですよ。そういえば詳しく聞いたことはなかったですが、中学生ぐらいからこうした装束を着ていらっしゃるんですよね? まあ、普通の中学生は、装束なんて着ませんけど(笑)。
承香院 いま思えばですけれども、もともと城下町で育っておりまして、神社の祭礼みたいなものが割と身近にあった。そこには平安を題材にした人形があったり、ほかにもいろいろな要素が複合的に絡み合いまして……例えば私、志村けんさんが大好きだったんですよ。
――まさか“バカ殿様”でしょうか?
承香院 そうです、そうです。コントなどでもよく着られている昔の衣装などに引かれていました。極め付きは、映画の「竹取物語」だったと記憶しています。男性が後ろに長い装束を引きずる場面があるんですが、そのときの「シューッ」という衣擦れの音に子ども心に感動して、あの装束を着てみたいと思うようになった。でもまだ小学生ですから、家のカーテンをおもむろに外して切り刻み、まとうくらいのことしかできず……するとこれがまた感動的で(笑)。ここからですね。平安の、とくに装束にのめり込んだのは。親ですか? カーテンがなくなったので、もちろんひどく怒られました。