感染後の合併症には警戒を
「劇症型」は、致死率約30%と言われ、発症後数十時間で死亡するケースも珍しくない。ただ、金子教授によると、「劇症型」を発症するのは、溶連菌が傷口などから筋肉や血液中に侵入した場合の話。今日本で起きている大流行の主な感染ルートである、飛沫(ひまつ)感染や接触感染によって発症するケースとは「別のものと考えたほうがよい」という。
それよりも警戒すべきは、合併症の存在だ。溶連菌感染後の免疫異常により、関節や心臓に炎症が起きる「リウマチ熱」や、血尿やむくみなどが現れる「急性糸球体腎炎」におちいる場合がある。AさんがIgA血管炎を発症したのも同じケースだと考えられる。
溶連菌感染症は風邪と同じように自然に治ることもあるが、抗菌薬(抗生物質)が有効で、合併症のリスクを下げる効果もあるという。
今、日本で溶連菌感染者が爆発的に増えている背景について、金子教授はこう推測する。
「例年、冬から春先にかけては感染者が増える時期ですが、21年と22年はコロナ禍で感染対策が徹底された結果、溶連菌感染はほとんど広がらなかった。溶連菌への集団免疫が低下しているなか、今年は多くの人がマスクを外してコロナ前の日常に戻ったため、一気に流行したのではないか。集団の中で流行しやすいと考えられるため、冬休みに入って子どもたちが学校に集まらなくなれば、感染者数は多少落ち着くと思います」
溶連菌に感染しないためには、うがい・手洗いやマスク着用を徹底したり、免疫力を高めるために食事や睡眠をしっかりとったりする基本的な対策しかない。「子どもの病気」と侮らず、特にこの冬は、大人でも体調管理に気をつけたいものだ。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)