7月26日より9月13日まで、50日間に渡り、越後妻有地域(新潟県十日町市・津南町)にて行われる、世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。
3年に1度開催され、第6回目となる今回は、すでにある作品200、継承したプロジェクト7、新作120、パフォーマンス約40、シンポジウム・学会4、映画上映数本のほか、廃校リニューアル、香港からの農業プロジェクト、アジア・アート・プラットホームなど、その数なんと380作品にも及ぶ大規模な芸術祭となっています。
本書『ひらく美術----地域と人間のつながりを取り戻す』では、大地の芸術祭の総合ディレクターである北川フラムさんによって、20年に渡る妻有地域での地域づくりプロジェクト、そして2000年の第1回からこれまでの、一筋縄ではいかなかった大地の芸術祭の歩みを振り返りながら、現場では一体何が行われてきたのか語られていきます。
田舎で行われる、現代アート中心の、お祭りとしての芸術祭。「そこの地域に生きる人と美術が媒介となって、都市や圏外、外国の人々をつなげ、地域の自立へのささやかでもよい、明るさをもった可能性の出発」(本書より)を目指すという趣旨のもと行われてきた大地の芸術祭ですが、760平方キロメートルという琵琶湖や東京23区と同じ広さである妻有地域----中里、津南、川西、松代、松之山、十日町の主に6つのエリアで、真夏に行われる芸術祭というだけあり、その条件の悪さから、都市などの美術展と比べると効率が悪く、汗をかき疲れるだけなのではないかと危惧される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、それこそが同時に、大地の芸術祭の魅力ともなり、人びとを惹きつけているのだといいます。実際、第1回には16万2800人という来場者数も、第5回には48万8848人に。
「作品を探して慣れない集落や山道を辿った末に出会う感動、足に返ってくる土の感触、むせかえるような草いきれ、汗だくの身体にそよぐ爽やかな風、そして折々に会う村びととの会話、行きかう旅人どうしの挨拶。(中略)妻有の芸術祭は美術情報を得るというよりは、作品に導かれての巡礼のようなものになっています。これが妻有の魅力になり、4割はリピーターであるという数字になっています」(本書より)
情報を大量に取得し、最短でアクセスするという現代の価値観とは異なる価値観をもった芸術祭。単なる消費されるイベントとしてではなく、そこでは作品を巡って、人と人、人と土地に、長年に渡るつながりが生まれるのだといいます。
初めて参加するという方、あるいは車を持っていないという方にも安心なように、作品を巡るツアー等も行われているので、今年の夏は「大地の芸術祭」に足を運んでみてはいかがでしょうか。