前出の小学校の男性教諭も「働き方改革と言われている時代ですが、現場の教職員は大変です。授業で教えなければいけないカリキュラムが増えているのに、運動会など学校行事に忙殺される。一昔前のように運動会の準備に毎日時間をかけていたら、教職員も子供も疲弊してしまう。半日開催は教職員の負担軽減の観点で理にかなっているし、時代の流れだと思います」と賛同する。
札幌市の二条小学校は運動会を半日で開催している。子供が熱中症になるリスクを減らし、運動会の準備に時間を割く教職員の負担を軽減することも目的だったが、それだけではない。全校生徒650人が集まるとグラウンドが手狭になるため、1、3、5年生は午前8時半~10時半、2、4、6年生は午前10時半~12時半までと「2部制」に分けて開催している。
永洞純一教頭は「家族や保護者の皆さんが1人でも多く、お子さんが頑張っている姿を見てもらいたいという思いで、時間を分けて開催しています。子供たちの集中力も続くし、短距離走など出場するプログラムで全力を出し切れる。半日開催だから手を抜くわけではありません。運動会の意義は大きいと思います」と強調する。
保護者からも理解を示す声が多い。神奈川県在住で中学2年生の長女を育てる母親(48)は、「1日開催の時はお弁当を作っても雨で中止になった場合は、また作り直さなければいけない。共働きの身としては大きな負担になっていました。場所取りもしなければいけないので、当日の午前7時前にはシートを持って学校に向かっていました。半日開催なら2時間で終わるので、立ち見でも大丈夫です。シートを持って朝早くに学校へ行く必要がないので、親の立場からすればありがたいです」と歓迎する。
また、小学3年生の長男の運動会に駆けつけた都内在住の40代の男性会社員も、「午前中だけなので時短を意識してサラッと終わるかなと思ったのですが、応援合戦は盛り上がっていたし、徒競走やリレーも盛り上がっていた。1日中運動会をしている時と熱気は変わらないなと感じました。これから半日開催が主流になっていくのでは」と話す。
一方、違った意見も。神奈川県で小学2年生の孫の運動会を見に来たという76歳の男性は、「家族みんなで弁当を食べて夕方まで盛り上がるのが運動会だと思っているので、午前中で終わるのは物足りないかな。組体操とか危険だからなくなっているけど、今の子供たちは体力がない。普段体を動かさないのに、過保護すぎると感じる」とプログラムを減らし、半日開催の運動会に疑問を呈した。
時代の流れと共に、運動会のあり方も変わっていくのかもしれない。草島小の山口校長は、「保護者の方々から様々な意見が出るのは当然だと思います」と前置きした上で、続けた。
「仲間たちと共に目標に向かって努力するという教育目標で、運動会は大切な行事です。コロナ禍で大人だけでなく子供たちも大変な思いをしましたが、色々な規制がある中、半日開催でテキパキと動いて創意工夫をしながら取り組んでいました。その姿を見て凄いなと感じさせられました。今後も地域の方々と話し合って助けてもらいながら、子供たちの思い出に残る運動会を作り上げていきたいですね」
全国各地の小・中学校で運動会の声出しが解禁され、大歓声と激励の拍手が子供たちに注がれる。今後も運動会は半日開催が主流になるだろうか。
(今川秀悟)