見栄えのいい「空気文字」を使っても意味がない
具体的にどういうことなのか、例を見ていくことにしましょう。まず、苦戦している営業パーソンは、一度会ったお客様に対してメールの冒頭で、
【ABC株式会社 第一営業部 ○○と申します】
というように名乗ります。まあ、これが普通ですし、何の問題もないと思っているのでしょう。しかし、これでは何の印象にも残りません。私は“ABC株式会社 第一営業部〜”という文言のことを“空気文字”と呼んでいます。間違ってはいませんが、お客様の印象に残すという観点ではゼロ点です。こうしたメールを送っていても、その他大勢の1人にしかなれないのです。また、ビジネスメールのテンプレートでよく見かける、
【拝啓 ○○の候 益々のご活躍のこととお喜び申し上げます】
というのも空気文字になります。つまり、営業活動で送るメールは“正しい文法かどうか”ということより“結果が出るかどうか”を重視すべきなのです。私の場合、長年のアポなし訪問をやめてお客様の役に立つ情報を送るようになった際、メールの挨拶文でお客様の印象に残るように工夫しました。一番のお気に入りは、次のようなものです。
【休みの日でもお客様のことを考えてしまう菊原です】
これを見たお客様は、「私たちのことを真剣に考えてくれそう」といったイメージをもちます。我ながらインパクトが大きい1文だと思っています。実際、契約になったお客様から、「あれを見たとき、『菊原さんなら安心』だと思った」と言っていただきました。
重要なのは「他の人とは違う」と思われること
その他では、次のような1文を使っていました。
一見、あざとい文章に思えるかもしれません。また、口に出して伝えるとなると、かなり照れくさい感じにもなるでしょう。ただ、メールの場合、このくらいの短文であれば、お客様もすんなりと受け入れてくれるもの。事実、私はこうした1文を入れることで、多くのお客様から「菊原さんは他の営業パーソンとは違うぞ」と相談相手として選ばれました。
これを聞いて、「いきなり法人のお客様に対して“休みの日でも~”とは書けない」と思った方もいることでしょう。たしかに法人営業の代表アドレスには送りにくいですよね。その場合は、冒頭ではテンプレートどおり“お世話になります。○○会社の~”と書き、最後の追伸でいい印象をもってもらえる一言を添えてもいいでしょう。
思っていることはストレートに伝えるべき
なお、メールではなく口頭で挨拶する場合ですが、接点のあるお客様に対しては「先週、名刺交換させていただいた○○です」とお客様が思い出せるきっかけをつくりましょう。
もちろん、まったくの新規の場合は、さすがに「いつもお客様のことを考えている○○です」と言うのはおかしいので、「このエリアを担当している○○です」といった感じでいいでしょう。ポイントは、お客様にいい印象を与えることです。心の中で思っているのではなく、お客様にしっかり気持ちを伝えてください。その姿勢は、きっとボディブローのようにお客様の心に効いていきます。
私が住宅営業をしていたときのことです。2組のお客様と商談をしていたのですが、両者とも30代で4人家族、予算や建物の希望も似通っていました。お客様Aさんは、すでに数回商談をして、家の間取りや予算も煮詰まってきています。
「おススメの~」と言っても客には響かない
「完成に近い建築現場があれば見たいのですが」と言ってきたので、会社で企画した現場見学会にお誘いすることにしました。
このお客様Aさんは、和室を設置せずに大きいリビングを考えているということもあり、話に乗ってきませんでした。まあ、しかたがありません。