先週に続き、再びタイトルに目が釘付けになった。千田琢哉『読書お金に換える技術』。〈教養人になんてなれなくてもいいので、お金を稼げる本の読み方を教えてください〉という要望に応えた本だという。それはスゴイ。教えて教えて!
 最初の教えはいきなりこれだ。〈つべこべ言わず、まずベストセラーを買え〉。う、そうなんだ。〈仮に読まなくても、傍に置いておくだけで売れている商品の空気を感じることができる〉からだという。かと思うと〈「ビジネス書・自己啓発書ばかり読んでいるとバカになる」は、嘘〉。なぜってシンプルなコピー(本の場合はタイトルや見出し)には〈人とお金が殺到する〉から。〈断言してもいいが、稼ぎたければビジネス書や自己啓発書を読むのが一番の近道だ。たいていは歴史や哲学の豆知識なども頻繁に登場するから、頭も良くなるのは間違いない〉
 なるほどねえ。一流の商品(ベストセラー)に親しみ、効率的な読書にいそしめってことね。実際、この本も〈20年以上増刷を繰り返している成功哲学書は、本物〉〈「やっぱり原書を読むべきだ」という正論は、無視していい〉と「シンプルなコピー」の50本連続攻撃だ。
 感心したのはここ。〈創業社長の本は、苦労話より自慢話に注目しろ〉。自慢話には稼ぐヒントが満載。〈他人の自慢話を喜んで聞けるようになれば、あなたが成功する日も近い。/自慢話を喜んで聞いてくれる人に、人とお金は殺到するからだ〉
 そして一番驚いたのはここ。〈マルクスの『資本論』は、今すぐ読んでおけ〉。おいおい、岩波文庫の『資本論』は全9冊だぞ。「シンプルなコピー」も皆無だし、むしろ稼がないためのバイブルだぞ。だが著者はいうのだ。〈なぜ人に使われる立場ではいつまでも稼げるようにはならないのか〉が学べると。著者は100冊以上のビジネス書・自己啓発書を上梓している成功者。自慢話も喜んで聞けないと、成功者への道は遠いらしい。どうりで!

週刊朝日 2015年7月24日号