元朝日新聞記者 稲垣えみ子
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 元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 冷蔵庫をやめて以来の我が家必須の台所道具が「おひつ」。エレクトリックな生活を営んでいた時代は、ご飯はまとめ炊きして一食分ずつラップで小分け冷凍し、電子レンジで解凍して食べていたんだが、おひつさえあればそんな大層な製品も作業も電気も不要なのだった。実験の結果、我が家ではご飯はおひつで3日もつことが判明したため、3日に一度ご飯を炊き、食事のたびにおひつからよそって食べるカンタン生活が10年以上続いている。

 で、それはいいんだが、日々酷使したせいかおひつがガタつき始めた。黒ずみは見た目の問題だからまだいいとしても、フタの部分の木が緩んできたのだ。でも大丈夫! これを買った時、デパートの店員さんが「修理すれば一生モノ」と宣言しておられたではないか。ってことでメーカーにさっそくメールで連絡。

 するとさすがは老舗様。すぐお返事が返ってきた。

 修理は受けつけますと。でもそれは我がメーカー名の焼印がある品に限ると。え、焼印? 彫刻はあるが焼いてはいない。まさか偽物? でもデパートで買ったからそれはないよね。まあそこは交渉の余地があるとして、問題は修理期間である。傷み具合によるが通常は1カ月半から2カ月とのことなのであった。

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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