上記の通り、私の場合、おひつは特別な道具ではなく日々生きていくのに欠かせぬ必需品なので、2カ月も使えないとなると生活に支障をきたす。さらに修理代の目安も頂いたがほぼ買うのと変わらぬ料金。となれば、通常は「じゃあ買い換えよう」となるんだろうが、なんかそれもイヤなのだ。直せるものを捨てるって要するに使い捨て。もうそういう世界からできるだけ離れたいんです。
昔はどこでも近所に桶職人がいて、日常的におひつや桶の修理を請け負っていたと聞く。でもそれは、私みたいな人が普通にたくさんいたからできたことなんですよね。暮らしとは一人で成り立つものではない。みながみなを支え合って成り立つのだ。自分のマイナー性が身に沁みる。
※AERA 2023年12月25日号