ユーチューブで公開されている「広島県安芸高田市公式チャンネル」がネット界隈(かいわい)で大きな注目を浴びている。内容は、同市の石丸伸二市長の定例記者会見や市議会の様子を配信しているのだが、チャンネル登録者は15万人に近づく勢いで伸びている。会見は再生回数が最高294万回とすさまじい数字に。なぜ、地方の小さな自治体の動画がこれほどまでに関心を引くのか。そこには市長のしたたかな戦略があるようだ。
「“炎上商法”が当たりました。広告収入だけで月100万円あります」
「東京都は人口2千万人でチャンネル登録が17万人、2位の茨城県が16万8千人、安芸高田市が2万7千人で登録者数は14万8千人。これってすごくないですか。もうちょっとで東京都を追い抜ける」
石丸市長は冗談交じりに笑いながらそう話した。
安芸高田市に生まれ育ち、京都大学に進学。その後、三菱UFJ銀行に勤務し、ニューヨークに駐在していたエリートだが、ある事件をきっかけに市長へと転身した。
「安芸高田市は終わってしまう」
広島県の北部に位置する安芸高田市は人口2万7千人弱。目立った産業はなく、山に囲まれたのどかな場所だ。雰囲気が一変したのは2019年7月の参議院選挙で、河井克行、案里夫妻が首長や地元県議らに計2900万円を配り、公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕された事件だ。
当時の安芸高田市長が60万円を受け取り、丸刈りにして会見で謝罪し、その後に辞職。当時の市議会議長、副議長も議長室などで克行氏から現金を受け取ったことも発覚し、辞職に追い込まれるという市政はじまって以来の大スキャンダルに見舞われた。
石丸市長はそのニュースを見て出馬を決めた。
「市長辞任で次の選挙に副市長が出馬するという。(無投票で前市長の継承を掲げる)この人に任せちゃ安芸高田市は終わってしまう、と強く思いました。すぐに会社に電話して『市長選に出ますから辞めます』と。1~2日して安芸高田市に帰りました」
戻るとすぐにこんな行動を起こした。