石油製品専用列車 JR東海道貨物線の鶴見川橋梁を渡る、日本石油輸送の石油製品専用列車。機関車は、EF210-111号機。朝焼けの中を行く(写真:と~ちゃんさん提供)
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 全国に張り巡らせた鉄道網を使い、日本の物流を陰で支える貨物列車。一見、地味。だけど、なぜか鉄ちゃんたちの心を鷲掴みにする。誕生から150年。今、再び脚光が集まる貨物列車の魅力に迫る。AERA2023年12月25日号より。

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 ゴォーという轟音を響かせながら貨物列車が通る。

「うわーっ!」

 母親(32)と一緒に見ていた男の子(5)は、目を丸くして歓声を上げた。

 JR武蔵野線の東浦和駅近く。田園が広がる間を武蔵野線が横断し、鉄道ファンの間では有名な撮影ポイントとして知られる。

EF210形-121号機 EF210形は1996年に登場。最初の配属先が岡山機関区で、ご当地にちなみ「ECO-POWER桃太郎」と命名された(写真:と~ちゃんさん提供)
EH500形-48号機 EH500形は1997年に誕生。パワフルな機関車で、一般公募で「ECO-POWER金太郎」の愛称が与えられている。福岡付近で撮影(写真:と~ちゃんさん提供)

 近所に住むという男の子は、幼いころから母親と散歩中に見かける列車が好きになり「鉄ちゃん」に。中でも貨物列車が好きで、今もこうして時々、貨物列車を眺めに来るのだという。

「かっこいい」(男の子)

 母親も息子に付き合ううちに、貨物列車が好きになったと笑う。

「重いものを引っ張って走る機関車の姿を見ていると、『頑張って走れ!』と、応援したくなります」

機関車に圧倒されて

 日本の鉄道貨物輸送はちょうど150年前の1873年、新橋-横浜間で産声を上げた。日本の物流を陰で支え、日本の近代化や戦後復興を牽引してきた。1987年に国鉄が分割民営化された後は、JR貨物が一手に引き受けた。いま貨物列車は、1日に約400本走り、全列車の走行距離は1日あたり地球約5周分に相当する18.6万キロに及ぶ。ただ、貨物列車は見た目が地味で、乗ることもできない。それなのに、鉄ちゃんたちのハートをつかんでいるのだ。

「魅力は何といっても、機関車の圧倒的なパワーと耐久性です」

 と熱く語るのは、横浜市在住のと~ちゃんさん(60代)。

 小学校6年生のとき、祖父にカメラを買ってもらったのが、貨物列車好きになるきっかけとなった。自宅近くの踏切の跨線橋で、当時大ブームだった寝台特急「ブルートレイン」の写真を撮るようになった。その合間に貨物列車も撮るようになると、貨物を牽引する機関車の姿にひかれたという。

「機関車は、1機で1200トンもの重量物を牽引できる出力があります。例えば、東海道線や山陽線を中心に活躍する機関車『EF210形』1機と、中央線の快速電車などで活躍するJR東日本の新型車両『E233系』10両の定格出力はほぼ同じです」(と~ちゃんさん)

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