渋谷タワーレコードのイベントにて。鈴木茂さん(写真左)と松本隆さん(ソニー・ミュージックレーベルズ提供)

 鈴木さんの即興を聴いた松本さんは細野さんとニヤリ。鈴木さんを誘い、はっぴいえんどの前身「ヴァレンタイン・ブルー」結成となった。「みんな女の子には縁がない。バレンタインには憂鬱になるからって、細野さんがつけた」。そんな松本さんの回想に会場が沸く。

「若林のアパートに大瀧さんが居候していて、そこを訪ねて『12月の雨の日』を書いたんだ」と松本さん。「部屋にあったのが『ガロ』。この雑誌を読んでいるのならわかってくれるとこの曲だった」とかつて聴いたエピソードを思い出した。「書き上げたら月が替わって師走になっていて。で、タイトルは『12月の雨の日』になった」

2ndアルバム『風街ろまん』

 青山生まれの松本さんの世界と四畳半の大瀧さんの世界が交差した瞬間。半世紀前の暮れの一日を振り返る言葉に僕は思わずメモをとった。

 最後にリマスターしたての、重量感があり輪郭のくっきりした『花いちもんめ』を爆音で聴き、会場はロック喫茶の雰囲気に。松本さんのドラムはレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムばりに力強く妖艶で、鈴木さんのギターはそこにまとわりつく色とりどりの大蛇のようだった。

 楽屋にご挨拶に伺うと「ステージからわかったよ。来てくれてありがとう」と松本さんが微笑んだ。

3rdアルバム『HAPPY END』

(文・延江 浩)

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