「だれでもピアノ」を演奏する古川結莉奈さん

ベッドの上にいても好奇心旺盛

 休憩をはさんで、ストレッチャーに乗ってリハーサル室にやってきたのは、小学5年生の古川結莉奈さん。「だれでも第九」では、第3楽章を演奏する。

 結莉奈さんは先天性ミオパチーという筋肉の難病により、身体を動かすことが難しい。気管切開・人工呼吸器などのケアを受けている。身体を起こすと呼吸が苦しくなるため、日常の多くの時間をベッドに横になって過ごしている。

 だが、好奇心は旺盛。ベッドの上にいながらメタバース空間でさまざまな場所へ出かけたり、音楽も好きで、幼い頃から、横になったまま片手で電子キーボードを弾いていたそうだ。

 練習を見ていると、弾いていないほうの左手も動かして、リズムに乗っている。一音、一音しっかりと、力強く美しい音を奏でていく。

「最初、難しいと思いました。でも、練習をたくさんやって、どんどんうまくなっているかなと思います」と結莉奈さん。演奏を心から楽しんでいる様子が伝わってきた。

 最後に車いすでやってきたのは、「歓喜の歌」で有名な第4楽章を演奏する宇佐美希和さん。生後まもなく脳性麻痺と診断され、両手足に障がいをもつ。

 希和さんがピアノを始めたのは、小学2年生のとき。姉がピアノを習う姿を見て、弾きたいと思ったのがきっかけだ。少し動かすことのできる右手で鍵盤を弾き、音をつむいでいく。

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3人の演奏には個性がある