「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。
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2023年になりました。本年もよろしくお願いいたします。
皆さまはどんなお正月を過ごされましたか?
我が家は珍しく夫が大みそかから1月2日まで連休を取ったため、自宅でゆっくりと過ごしました。旅行などの予定がないのに年末年始に彼が休んだのは20年ぶりくらいだと思います。基本的に我が家の育児はワンオペなので、医療的ケアが必要な長女をお風呂に入れてくれたり注入をしてくれたりと、ケアをする人が私以外にもうひとりいるというのは、気持ちに余裕が生まれます。時間を気にせず自由に動けたことが、今年のお正月の何よりのぜいたくでした。
今回は「障害児育児のお正月」を書いてみようと思います。
■親戚に子の病気や障害をどう話せばいいか
年末年始には実家に帰省したり、親戚に会う方も多いと思います。障害のある子どもを育てていると、こうした会食の場が苦手だという話をよく聞きます。
久しぶりに会う親戚に、子どもの病気や障害のことをどんな風に話せば良いのか戸惑うママが多いのです。生まれたばかりの頃は何とかごまかせても、1~2年たっても座って食事をすることが難しかったり、話すことや歩くことがぎこちなかったりする場合、ママも親戚も、お互いどう接していいのか悩んでしまうのかもしれません。
我が家は私の両親と二世帯で暮らしており、夫の実家もすぐ近くなので祖父母とは日常的に交流がありますが、私もたまにしか会わない親戚が集まる時や、長女や息子の写真入り年賀状を見た方がどう思うのか不安になることがありました。
■月齢が近い子と会うのが怖かった
今では笑い話ですが、12月生まれの息子は2月末が本来の出産予定日だったため、修正月齢(早産児の発達を出産予定日を基準にみていくこと)から、学年の一番最後の時期に生まれたお子さんと同じなのだと必死でアピールしたり、年賀状の写真を長女が健常児に見えるように何十枚も撮影したりと、私なりに頑張っていた時期もありました。我が家の子どもたちと月齢が近いお子さんに会う時には、比較されることが怖くて本当に緊張したものです。
そして何よりも、長女の病気は双子の次女が健常児だったため、「残念ながらたまたま障害が残ってしまった」と捉えてくれる人が多かったのですが、息子の時にはもう「たまたま」とは思ってもらえないだろうとかなり落ち込みました。
我が家の子どもたちの脳性まひの原因に遺伝的な要素はありませんが、この病気を知らない親戚が聞いたらどう思うのか、長女の時以上に息子の足のことを話す勇気はなかなか持てませんでした。