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天体撮影用高画素
フルサイズデジタル一眼レフ
D810Aは、ニコン初の天体撮影専用デジタル一眼レフだ。同社の高画素機であるD810をベースにした特殊なモデルだ。
通常のデジタルカメラでは、赤外域を感知し色かぶりしないよう、撮像素子に赤外カットフィルターが取り付けられている。D810Aでは、可視光線ではほとんど見えない、水素の輝線スペクトル(Hα線)で光る散光星雲が写るよう、赤外カットフィルターの分光特性を変更し、Hα線については通常モデルの4倍の感度を実現している。さらに、暗い天体撮影に便利な新機能を追加したモデルだ。画素数が少ないと暗い星がピクセルに埋もれて写らないという弊害があり、有効3635万画素の意味は十分にある。
素性のいい高画素フルサイズ撮像素子と、最新の画像処理エンジンの組み合わせは、高感度性能がよく、ノイズも少ない。感度面は十分すぎるほどだ。さらに、超高画素機だけに微光星の写りも上々で、星雲や天の川などを撮るとその差を痛感する。
一般に、天体写真はRAWで撮影しパソコンで処理するのが普通。それだけに、情報量の多い14ビットでRAWデータができるのもうれしい。
また、バルブや長時間露光時に、30秒露出相当の明るさでライブビュー表示される機能が追加されている。天体撮影は、一眼レフファインダーではフレーミングが難しい。しかしこの機能により、ライブビューで星座が楽々確認できるので、効率よく安心して撮影できる。もちろん、ライブビューで拡大表示してのピントチェックも容易だ。
メーカー純正の天体撮影専用機は珍しいが、キヤノンからは天体撮影用のEOS 20DaやEOS 60Daが発売されており、ノイズリダクション特性の関係もあり、天体写真愛好者には、キヤノンユーザーが比較的多かった。そのキヤノンの牙城に対して、ニコンはD810Aでせまろうというわけだ。
普段APS-Cサイズで有効約1800万画素のキヤノンEOS 60Daを使うことが多いが、今回、D810Aで撮ってみると「やはり最新の専用機は違う」と感じた。
一方、風景や人物など天体以外の通常シーンを撮影すると、近赤外域の色特性が異なるため、光源によってはやや赤みが強い色調になる。意外に差は少なかったが、やはり厳密な撮影にはお勧めはしない。
◆ 山田久美夫
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●マウント:ニコンFマウント●撮像素子:有効3635万画素。35.9×24.0mm。CMOSセンサー●ファインダー:アイレベル式ペンタプリズム使用一眼レフレックス式ファインダー。視野率:約100%。倍率:約0.7倍(50mm・∞・−1.0dpt)。視度補正:−3~+1dpt●モニター:3.2型TFT。約122.9万ドット●シャッター:電子制御上下走行式フォーカルプレーンシャッター、電子先幕シャッター。1/8000~30秒(M*時は最大900秒)。X接点:1/250秒(1/250~1/320秒はガイドナンバー減少)●撮像感度:オート、ISO200~1万2800。拡張でISO100、ISO5万1200可●内蔵ストロボ:手動ポップアップ方式。ガイドナンバー:約12(ISO100・m)●連続撮影:最高約5コマ/秒●無線通信:なし●記録媒体:SDメモリーカード(SDHC/SDXC、UHS-I対応)、CFカード●大きさ・重さ:約146×123×81.5mm・約980g(バッテリーとSDメモリーカードを含む)、約880g(本体のみ)●価格:オープン(実売41万3770円)