日本じゅうがイケイケだった、高度経済成長期。そのイケイケ感の“増幅装置”のように、首都圏に大型娯楽施設が次々と誕生した。
 象徴的な施設のひとつが、東京湾を埋め立て建設された、船橋ヘルスセンター。浴場だけではなく、プールに歌謡ショー、野球場にテニスコート、飛行場(!)まで。その様を、当時、開高健は、「巨大なステテコの共和国」と表現した。競馬場やボウリング場、大劇場に大型キャバレーも。首都圏の風景が一気に変貌していく時代に、都市の流行や移り変わりを伝えてきたマーケティング誌「アクロス」の編集長でもあった著者が切り込んでいく。
 バブル以降、モノを消費することが大切だった時代は終わったいっぽうで、同じような巨大ビルやチェーン店で開発される近年の東京は、こぢんまりした「つまらない」都市になっていると指摘する。パワフルに、それこそ“ノリ”で造り上げられた、本書に登場する「娯楽の殿堂」が漂わせる、やたらに楽しそうな極彩色オーラの前には、2020年に向けた開発の縮小ムードが、かなり色あせてみえる。

週刊朝日 2015年7月10日号