
はじめは配達を担当していたが、当時の工場長から「経営者になるのなら、工場のことを知っておいたほうがいい」と言われ、調合や機械の操作方法を教わりはじめた。「おかげで液体を作るよりも、機械をいじるほうが好きになりました(笑)」と話す寺田社長は、40歳までの10年間工場長を務め、2014年に社長に就任した。
現在、地元の中野一帯の居酒屋のみならず、「トーインの炭酸水やサワーで割って飲む酒はおいしい」と、太鼓判を押す店や愛飲者が増加中だ。寺田社長はその人気の理由をこう明かす。
「見ず知らずの方が飲んでリピートしてくださる商品を作るために、僕たち飲料会社はどうすればいいのか。難しく考える必要はありません。果汁とフレーバーは高価でも良質なものにこだわり、いい炭酸飲料を作ればいいんです。そうすれば、焼酎もよりおいしくなりますよね。我が社の商品は、まさに材料を厳選。『レモンサワー』のレモンはイタリア・シチリア島産ですが、収穫・出荷数を限った果実園から独自に仕入れています。そして炭酸の抜けにくさに加え、シャンパンのような口当たりの良さを実現させているんです」
「ハイ辛」「チュウタン」といったユニークな商品もある。
約15年前、息子が焼き鳥に七味をかけるのを見たという社員が、「辛い飲料を作ろう」と持ちかけてきたのが「ハイ辛」誕生のきっかけ。香料メーカーなどと一緒に辛いエキスを探し、ラー油やお菓子なんていう案も出たが、なかなかうまくいかない。心が折れかけた頃に唐辛子と出合い、唐辛子の辛さにぽかぽかするしょうが味を掛け合わせることにした。500ミリリットルのワンウェイびんを通販したところ、最近になって注目され、スーパーマーケットに置かれるまでになったという。
20年ほど前に、父である現会長が「夢で見た!」「いいものができるから作ってみよう!」「焼酎の“チュウ”に炭酸の“タン”でチュウタンだ!」と大興奮で言い出したことをきっかけに誕生したのが「チュウタン」。斬新すぎたのか当初はあまりにも売れず、まずはお試し用にとあちこちに配ったところ、こってり系のお料理を出すお店と相性がよく、商品として定着した。「父が『もっと酸っぱく』と言うので試していった結果、かなりの酸っぱさになりましたが」と寺田さんは笑う。