でもお客さまの様子を見れば、接客の仕方は変わりますよね。誰かの写真を見ながら乗っている方や、デッキで電話をかけまくっている方。とても楽しませるなんていう状況ではなかったので、少しでもみなさんの近くに行って、話を聞こうと思いました。

「どちらまで行かれるんですか?」って声をかけると、「実はね」って張り裂けそうな胸の内を話してくださる方が大勢いました。少しでも心の荷を下ろしたかったんだと思います。ある若いお客さんは、「友達の身元確認で呼ばれたんです」と教えてくれました。その子とは帰りの新幹線でも一緒になって、「どうだった?」って聞いたら、「姿が全然別人だった」って。

 震災を機に、「販売員はただモノを売るだけの仕事じゃない」というポリシーが固まりました。そして、次のキャリアとして、新幹線の外に出て、より多くの人に販売という仕事の意義を伝えたいと思ったんです。

――JR東海が車内ワゴン販売を中止するニュースを知ったとき、何を思いましたか?

 さびしいなーって。それしかなかったです。でも、私も現役のころから感じていましたが、時代の流れなのでしょうね。

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ただの移動手段になってしまった