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 もの忘れが増えたり、ちょっとした失敗が増えたり、家族が「あれ? 認知症かも」と思っても、すぐに専門の医療機関に連れて行く人は少ないそうだ。「『うちのお父さん(お母さん、夫・妻)にかぎってまさか』と認めたくない気持ちがあるのはわかります。それでも認知症は早期発見、早期対応が最も大切です」と話すのは、認知症専門医・朝田隆(あさだ たかし)さん。朝田さんの著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』(アスコム刊)から、認知症の専門外来へ家族をうまく連れて行く方法を紹介します。

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男性には『おとり作戦』

 認知症グレーゾーンの段階では、本人も葛藤している状態なので、ご家族が医療機関に導くのが難しい場合も少なくありません。

「なぜオレが病院へ行かなければいけないんだ」「私がボケてるとでもいうの!」と抵抗されがちです。

 このとき、相手が男性であれば、受診に誘導するコツがあります。

 奥さんが、いわば『おとり患者』となって、「私、最近もの忘れが多くて心配なの。お父さん、一緒についてきてくれる?」と伝えるのです。

 すると、たいていの男性は「オレがついていれば大丈夫だ」とか言って、率先して一緒に医療機関へ同行してくれます。

 事前に連絡しておけば、認知症の専門医は上手に対応します。

 奥さんの偽の検査をするときに、「ご主人も一緒にどうですか?」と声をかけ、奥さんとともに検査をするということにすれば、男性はわりとすんなり受け入れます。

 結果、認知症グレーゾーン、または認知症とわかっても、医師が理にかなった説明をすると納得するのが男性に多い特徴です。

女性には『寄り添う作戦』

 奥さんが認知症グレーゾーンの疑いがある場合、ご主人が同様の『おとり作戦』を実行しようとしても、意外と失敗しがち。

 男性は要領が悪いせいか、いつもと違うご主人の様子を奥さんはすぐに察知して、「自分のことが心配なら、お父さん一人で行ったら」と言われるのがオチです。

 ですから、奥さんや母親など、女性を受診につなげるときは、下手に作戦を立てるよりも、本人の「もしかしたら」「怖い、どうしよう」という思いに寄り添い、希望のある言葉を伝えるようにしましょう。

「君のことがとにかく心配なんだ。今は認知症の医療がかなり進んでいて、早く発見できればUターンできるから受診しよう」といった言葉を伝えましょう。

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「あれ?」と思ったら迷わず検査を