現在9位にいる川崎はどうか。2017年から5年で4度のリーグ制覇と黄金期を謳歌した後、昨季2位からのV奪回が期待されたシーズンだったが、ここ数年続いた主力選手の海外流出が響いて不安定な戦い。開幕9試合を2勝3分け4敗と出遅れると、4月末から3連勝を飾って浮上の兆しを見せたものの、8月から9月にかけての5試合を1分け4敗と苦しい夏を過ごして優勝争いに加わることができなかった。家長昭博は健在で、宮代大聖、山田新と若手の成長も見えたが、チームが過渡期であることを感じさせたシーズンとなり、来季は今以上に他クラブは「川崎、恐るるに足らず」で向かってくることが予想される。果たして再浮上できるのか。チームのテコ入れは必須で、大型補強も必要だろう。
この川崎の現状を考えると、現在3位の広島や8位のC大阪の方が期待できそう。そして注目したいのが、残留争いを繰り広げた2チームだ。いずれも序盤、中盤と低迷が響いたが、9月以降の戦いを見ると、柏が3勝3分け2敗、そして湘南は5勝2分け1敗の好成績を収めている。山口智監督率いる湘南は、町野修斗の海外移籍があって15試合白星なしという長いトンネルを味わったが、夏の補強で加わったキム・ミンテ、海外移籍から復帰した田中聡が加わったセンターラインが機能し、新エースの大橋祐紀が13得点と躍動。土俵際の戦いを続けた中でJ1残留を成し遂げた経験はチームの財産となるはずで、オフに戦力を補充できればクラブの目標である「5位以内」の戦いも期待できる。
もちろん、オフの補強次第で大きく変わってくるが、サポーターに向けてどれだけ「来季の期待感」を届けられるかも、この時期のクラブの重要な責務と言える。J1は最終節を残すのみだが、決して消化試合ではない。「来季へ向けて何が必要か」をしっかりと見定める興味深い1試合になる。(文・三和直樹)