新型コロナウイルス感染拡大により、「少しくらいの体調不調や微熱なら、はってでも会社に行くべき」という風潮は薄れつつある。だが、日本人はいまだに「休む=悪いこと」と捉えがちだ。日本の労働環境は、今後どのように変化していけばいいのだろうか?
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休むことに罪悪感を持つ日本人は多い。その理由について、フェミナス産業医事務所の代表産業医・精神科医である石井りな医師は、「日本人は、集団帰属意識が強い人種なのだと思います。それ自体は決して悪いことばかりではないのですが、『たとえ体調不良でも、仲間が頑張っている中で自分だけ休むわけにはいかない』という考えに発展するのでしょう」と分析する。
40代以降は特にこういった意識が強めで、20~30代の若い世代は自身の健康を優先する傾向にあるという。しかし全体を俯瞰すると、休みたがらない人のほうが多いのが実情だ。大手総合旅行会社のひとつであるエクスペディアが実施した「有給休暇の国際比較調査」では、2022年の日本で働く人の有給休暇の取得率はワースト2位だと発表された。
「自分が勤めていた時には子どもの用事や看病などで有休をほぼ使いきっていましたし、リフレッシュのため平日のお休みを活用したいと考えるタイプなので、なぜ日本人が有休を活用しないのか個人的にはいつも不思議に感じています。ただ、2019年に働き方改革関連法が施行され、その後、新型コロナウイルスが流行し、リモートワークやフレックス制が一気に普及しました。家でできることが増えたので、何かしらの理由で休みを取らざるを得ない日、働けなくなる日が減った印象です」と石井医師。
その一方でせきや熱などの感染が疑われる症状に敏感になり、自身の体調面を気にする人も増えた。コロナが降りかかったおかげで、休むことへの罪悪感やハードルが下がり、体調不良時や健康維持回復のために有休をとりやすい雰囲気も生まれたのだという。
有休をとるには現場間での協力がマスト
以前よりも、休みをとりやすい空気に変わったはずなのに、なぜ世界的に見て有給休暇の取得率が低いままなのだろうか。さまざまな理由が考えられるが、都内に多くの顧問先企業を持ち、ビジネスパーソンと接する機会も多い石井医師は、有休をとるためのスケジュールやタスクのコントロールが難しいのだろうと仮説を立てる。