望海風斗(のぞみ・ふうと)/1983年、神奈川県生まれ。2003年、宝塚歌劇団に入団。17~21年、雪組トップスター。退団後は「ドリームガールズ」「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」などに出演。23年、読売演劇大賞優秀女優賞、菊田一夫演劇賞を受賞(撮影/横関一浩)
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 AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

宝塚のトップスターにとって、退団後の「第二幕」をどう踏み出すかは大きな課題。コロナ禍の最中に退団を決めた望海風斗が、「日経エンタテインメント!」の連載を通して、転換期の1年半をまとめた。舞台で輝きながら、観客に感動を届けるスターは日々、精進を忘れない。プロフェッショナルとして、新たな道を真摯に歩む姿が記される『望海風斗 第二幕』。著者である望海さんに同書にかける思いを聞いた。

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 2021年に18年在籍した宝塚歌劇団を卒業した雪組元トップスターの望海風斗さん(40)。退団後は「ガイズ&ドールズ」「ドリームガールズ」など話題のミュージカルでメインキャストを務め、今夏は大作「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」のサティーン役で大輪の花を咲かせた。

 その望海さんが俳優として再始動した退団後の1年半を綴った本が同書だ。ミュージカルをはじめ、全国コンサートツアーなど、出演した舞台の時系列に沿って、作品に取り組む様子を、その時々の思いとともに、素直で謙虚な筆で記している。

「宝塚で極めた『男役』から一人の女性に戻り、再び舞台に立っていく。その変化の中で直面したこと、大切だと思ったことを残しておきたかったのです。その時に感じたことって、後になると忘れてしまうので、記録することは大事だな、と」

 本では随所に、望海さんが読んだ本、観た舞台の話が登場し、好奇心と向上心が伝わってくる。かつて宝塚受験を考えた時は、天海祐希さんの本を読んで「宝塚って、こうなんだ、スターって、そう考えるんだ」と、心の支えにした。その記憶が出版にいたる理由の一つにもなったという。

 語りとともに、「いきものがかり」の水野良樹さん、野田秀樹さん、井上芳雄さん、菅野よう子さんら第一線で活躍する12人の舞台関係者との対談も収められている。「お会いする前はドキドキで……」と、ここでも謙虚な聞き役として話を引き出し、学ぶ姿勢が印象的だ。

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