とりあえず「室内には爆弾はない」という2時間ぶりの安全を噛み締めながら、再び洗面所へ行きました。するとまさかの出来事が……。「ピッ!」。聞き覚えのある音が……。5秒おいてまた「ピッ!」。
爆弾の正体はあの「Bath Bomb」ではなかったのです。ならばこの「ピッ!」はどこから鳴っているものなの?
もう一度、洗濯籠や買い置きシャンプーたちをどかして、さらに奥に何かないか覗き、手を伸ばしてみました。すると、洗面台の下にあるスペースのずっと奥に、何やら硬くて薄くて重いものが床に張り付くようにして置かれています。どこかで触った覚えのある形と感触です。
埃まみれの硬くて薄くて重い物体を引っ張り出してみました。10年近く行方不明だった真っ赤なボディの体組成計でした。クイズ番組の商品で頂いた有名メーカーの製品で、体重だけでなく体脂肪率や骨量などもはかれる優れものです。最後に乗ったのは40歳になったばかりの頃だったでしょうか。もちろん電源に繋がってなどおらず、スイッチすら入っていません。この体組成計は電池式なのです。
にもかかわらず、「ピッ……!」「ピッ……!」と鳴いているのはこの子で間違いありません。しかし何故、電池も入っていない体組成計が今さら鳴き出すのか。この子が爆弾でないことは、直観で分かりました。そんな愚行に走るような子ではありません。
まっ赤な薄いボディを裏返しにし、電池を入れる部分の蓋を開けました。とうの昔に燃料切れしている単3電池が4本。ゆっくりと電池を抜くと、それっきり「ピッ!」は止まりました。
私が特にコロナ禍以降、とてつもなく太ったことは、テレビなどで私を見かけた方なら誰もがお気づきのことでしょう。日に日に体が膨張し、腰と膝の痛みが増す中、私は頑なに自分の体重を知ることを拒んで今日に至ります。