
夜になると、ビバリーヒルズ市庁舎が、イスラエル国旗と米国の星条旗が交差するデザインでライトアップされた。ビバリーヒルズ市の人口約3万1千人のうち約7割がユダヤ系だ。
今回、筆者がLAのパレスチナ支援デモで撮影したビデオを中西部ミシガン州の友人数人に送ってみたところ、「今、こんなデモが起きているの? 知らなかった」という反応が複数あった。イスラエルとガザの状況が報道されていても、多くの米国市民たちの関心事がアメリカンフットボールと紅葉であることもまた、この国の現実なのだ。

緊張の中にも日常が
週末にLA市内の公園を訪れると、白シャツと黒ズボンで正装したユダヤ系の男の子たちが両親に手を引かれて歩いている姿を見かけた。またダウンタウン付近の広場では、パレスチナのシンボル模様の入った白黒のスカーフを首に巻いた子どもたちと頭にヒジャブをかぶった母親が、地面に毛布を敷いて、その上でメッカの方向に祈りを捧げていた。マスコミが好む「分断」という言葉で単純に説明できない人々の日常がそこにはある。
ホロコーストで親戚を失った30代の男性は、パレスチナを支持するデモに参加していたが、筆者の取材に対し名前も正確な年齢も教えられないと言った。
大人たちが本音を打ち明けられる相手を用心深く吟味して生活する中、子どもたちは独自に活動していた。ビバリーヒルズの交差点で、レモネードを売っていた8歳のユダヤ系米国人のサラ・ラシトラちゃんは、おもちゃのレジの中に売り上げた合計200ドルの紙幣をきちんと畳んで入れていた。全額をイスラエルに支援金として送るのだと言う。一方、LAのデモ現場では、小さなパレスチナ旗を一つ5ドルで売る子どもがいた。水のボトルを無料でデモ参加者に配る子どもたちの姿もあった。
移民社会の米国で、ユダヤ系、パレスチナ系の個人が、さまざまな背景を抱えつつ生きている。(在米ジャーナリスト・長野美穂)
※AERA 2023年11月13日号より抜粋