2023年11月6日号より

サポート体制整備が先

 過保護も放置も行き過ぎると「虐待」になる。これらの境界線はどこなのか。

「どの程度から虐待かという明確な基準はなく、虐待の境界線は難しい問題」と話すのは児童虐待について詳しい日本女子大学准教授(児童福祉)の和田上貴昭さんだ。

 児童虐待防止法が定める児童虐待は、身体的虐待・性的虐待・ネグレクト・心理的虐待の4種類。自民党埼玉県議団は当初、子どもだけの遊びも“放置”と位置づけ、虐待にあたると説明。「安全配慮を怠った場合」という説明が抜け落ちていたことが、大炎上を招いたと弁明した。

「そもそも今回は“虐待”という言葉で表現しないで『適切な養育か、適切とは言えない養育か』と言い換えて考えた方が理解しやすいでしょう。ただ、日本は、社会のサポート体制が追いついていません。法律や条例は社会の状況を踏まえて取り組むべきで、まず子どもが育つ環境を整えることが、この条例を作るより先だと思います」(和田上さん)

 議論を尽くさず、あまりに拙速だった今回の条例案撤回劇。何が適切な養育といえるのか。この騒動が議論の引き金となったことだけは間違いなさそうだ。(ライター・大楽眞衣子、フリーランス記者・宮本さおり)

AERA 2023年11月6日号より抜粋

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