そして週刊文春がこの問題をとりあげるのは、興味本位な理由からではなく、〈ジャニー喜多川氏の行為が法令違反に問われるような反社会的なものだからである〉としていた。喜多川氏の行為は、〈金品、職務、役務その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して性交又は性交類似行為を行ってはならない〉とする条例に違反しているからだとキャンペーン中何度も強調していた。

 連載の三回目には12歳の少年が、ジャニー喜多川に性的暴行をうけたケースをとりあげている。この被害は、13歳未満の男女に対してわいせつな行為を働いたという〈刑法の強制わいせつ罪に問われる“犯罪”である〉と明確にしたのである。

 それに対してジャニーズ事務所側は事実無根と提訴したが、高裁で「一審原告喜多川が、少年達が逆らえばステージの立ち位置が悪くなったりデビューできなくなるという抗拒不能な状態にあるのに乗じ、セクハラ行為をしているとの本件記事(中略)は、その重要な部分について真実であることの証明があった」と断じられ、この判決が確定したというわけだ。

書かれたものが全てだ。

 キャンペーンでは現在さかんに論じられている「メディアの沈黙」についても何度も指摘している。芸能レポーターの梨元勝のコメントをこう引用している。

〈文春で報じていることは、テレビ局の報道で取り上げていいことだと思うんです。しかし、ジャニーズといえば、ドラマや音楽をつくる制作部門からクレームがつく〉

 今回“ジャニーズ崩れ”とも言うべき状況になったのはBBCが3月に週刊文春の報道をもとに番組をつくり、スポンサーがジャニーズ出演の番組から降り始めたからだが、週刊文春は当時、木村拓哉をCMに起用したジーンズメーカーのリーバイスのアメリカ本社に一連のキャンペーンを説明したうえで意見を求めている。

 そして実は当時、ニューヨーク・タイムズがこの文春報道をとりあげているのだ。

 記事を書いたのは、当時の東京特派員であるカルビン・シムズ。彼へのインタビューがキャンペーンの最終回だった。シムズの記事は、日本のメディアがこの問題をまったくとりあげていないことに焦点を絞っていたが、その理由を「ジャニーズ事務所をめぐる問題は、性的虐待疑惑であると同時に、日本のメディア状況の問題でもある。そういう意味でも、取り上げる価値があると思った」と語っているのだ。

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