キャンペーン連載中に、ジャニーズ事務所は名誉棄損などで文藝春秋を提訴した。

 にもかかわらず、日本テレビを始めとするテレビ・新聞はまったく無視。それが23年後なぜこのような状況になったのだろうか。

 ここからは、私の分析。

 当時は、ネットフリックスもアマゾンTVもなかった。人々が娯楽を得ようとすれば、日本の新聞社の系列であるテレビ局の番組からしか得ようがなかったのだ。新聞社と系列のテレビ局、そしてそれにスターを手配している芸能事務所、これらが握ってしまえば、数えきれないほどの未成年への性的虐待も「なかった」ことにしてしまえたということだ。

 それが人々の情報をえる手段が地上波からネットにかわっていったことによって、この鉄のトライアングルが崩れた。たとえば、BTSのようにグローバルに活躍しようと思えば、ハーベイ・ワインスタインよりひどい性的虐待者が経営をする事務所からでは難しい。

 企業もそのような事務所のスターが登場する番組にお金を払うことはできない。これがこの20年の間に進んだ構造変化だ。

 日本テレビは10月4日、ジャニーズ問題に関する検証番組を放送した。出演した田中東子東京大学教授は、「テレビ局で決定権を持つ人の中に男性が多かったことが、性暴力に対してたいしたことがない、ささいなことだという判断になったのではないか」と語っていたが、くだんの社会部長は女性である。

 これは男女関係なく、日本の新聞・テレビという閉鎖空間ゆえの文化が原因だと私は考えている。

 番組は、キャスターが「私たちは性加害など重大な人権侵害について沈黙することなくしっかり報道していきます」と宣言して終わっているので、ぜひそうしてほしい。この原稿についても、いたずらにいきりたつことなく冷静にうけとめて前に進んでほしいと思う。

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