プレリュードとの最大の違いは、FR方式の採用。低いボンネットデザインを実現させるFF用コンポーネントが日産になかったのが一番の理由だが、これがシルビアの運命を大きく変える。1987年にトヨタ・カローラレビン/スプリンタートレノがFFに変更され、手頃なFRモデルが世から消えていた。そんな矢先、カッコいい上にFR、手頃な価格のシルビアは、走り屋にとって最高のプレゼントとなった。特にターボ車(K's)は出力も高く、スポーツ走行にも適した設計の上にチューニングパーツも豊富。その結果、デートカーはサーキットや峠を走るマシンの定番へと変貌を遂げてしまったのである。とはいえ、約30万台を売り上げ、歴代シルビア最多を記録するなど、ビジネスでは成功を収めたのは、紛れもない事実である。

「ART FORCE SILVIA」のキャッチコピーでデビューした、5代目シルビア(初期型K's)(写真提供/日産自動車株式会社)

 実際のもくろみとは違う形で評価を受けた2台。要するにユーザーの“味変”が逆に定番となったわけだが、一つ言えるのは「トレンドはメーカーではなくユーザーが作る」ということだろう。そんな“例外”の登場を再び期待してしまう自分がいる。

山本シンヤ(やまもとしんや)/自動車メーカー商品企画、経て、自動車メディアの世界に転職。「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるべく「自動車研究家」として活動中
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