1972(昭和47)年に登場した2代目ローレル(C13型)(写真提供/日産自動車株式会社)
この記事の写真をすべて見る

 隔週刊「トミカ歴代名車COLLECTION」は、タカラトミーが厳選した歴代名車を、その詳細を解説したマガジンとともにお届けするシリーズ。スポーツカーからはたらく車まで、毎号付いてくるトミカはオリジナルデザインで、これを集めると、唯一無二のトミカ・コレクションが完成する。

【動画】12号に収録の「日産 シルビア」はこちら

   2週間に一度の発売日には、マガジン巻末に収録されるリレーコラム「My car, My mini car」をAERAdot.にも配信。「日産 シルビア」を取り上げた10月31日発売の12号のコラムは、モータージャーナリスト・山本シンヤ氏による「コンセプトメイクから大きく外れた2台」だ。

***

 すべてのクルマには開発コンセプトが存在する。どのようなユーザーが、どのようなシーンで、どのような用途で使われるか……などを、姿も形もない段階で決める。これを「コンセプトメイク」と呼ぶ。大半のモデルは市販されると、ドンピシャとは言わないが、その想定から大きく外れることはない。

 しかし、極まれな“例外”も存在する。その一つは、1972年に「ゆっくり走ろう」とのキャッチで登場した2代目ローレルだ。クルマの性能をフルに使い切るのではなく、“余裕”をもって走ろうという、大人なカーライフの提案だった。しかし、実際は……。アメ車を彷彿(ほうふつ)とさせるスタイルは若者にも大人気となり、ハードトップはリアのデザインから「ブタケツ」の愛称で親しまれる。さらに、基本コンポーネントがスカイラインと共用でチューニングパーツが豊富だったことで“ヤンチャ”だった人を中心に、「やっぱ、ローレルでしょ!!」という現象が起き、当時の自動車雑誌には「ハの字(極端な車高ダウン)、タケヤリ(派手なエキゾースト)、出っ歯(大きなスポイラー)」の“ヤンチャ三種の神器”を装着したローレルが数多く登場した。そう、結局ローレルは、ゆっくりとは走らせてもらえなかったのである。

 もう一つの例外が、5代目シルビアだ。1980年代、スペシャルティカーが人気を博した時代があった。そのトレンドを作った2代目ホンダ・プレリュードの最大の強みは“見た目”だった。車幅が広く車高が低い(ワイド&ロー)日本車離れしたスタイルは、男性からも女性からも高く評価され、肩肘張らない都会的なセンスの“デートカー”として大受けしたのだ。一方、当時、4代目シルビア(S12型)を発売していた日産は、汗臭いクーペから抜け出せていなかった。そこで「打倒プレリュード」をキーワードに開発されたのが、5代目シルビアである。

次のページ
走り屋への最高のプレゼント