以上のようなことが一瞬にして僕の脳内を満たしましたが、そして願わくば喋る前に満たしてほしかったですが、喋ってしまった尿漏れは、もう取り返しがつきません。覆水は盆に返りません。尿漏れはちんちんに返りません。やめろ。反省してるならやめろ。今すぐやめろ。

 いや違うんだ。みんな聞いてくれ。頼むから聞いてくれ。あるいは聞かないでくれ。先日、撮影の合間にトイレで用を足したら、どうやら「振り」が甘かったらしく、内ももにツツーとつたったのさ。尿が。尿漏れが。それを衣装さんに、若い女性である2人の衣装さんに、もちろん名前は伏せるが森本さんと高須さんに、どう謝って許しを乞うべきか考えたという話から、現場の楽しい雰囲気をお伝えしようと思ったんだ。

 伝わらない。きっと全然伝わらない。尿漏れのエピソードを話しても、きっと現場の楽しさは伝わらない。俺の「老い」は伝わる。むしろ俺の「老い」しか伝わらない。

 当たり前ですが、記者の方々、皆さんポカーンです。人はこれほどポカーンとできるのかというくらい「THE・ポカーン」です。記者の方々の後ろに関係者(プロデューサー陣はもちろん、局や制作会社の偉い人たちなど)が沢山いたんですが、その人たちも「THE・ポカーン」です。会場全体がTHE・ポカーン。尿漏れでTHE・ポカーン。

 そりゃそうです。制作発表の第一声で尿漏れを告白した俳優なんぞ、どこにいるでしょう。もはやこんなものは、挨拶でさえありません。もう、なんでしょう、集会所で囲碁をさしてるおじいちゃんの独り言です。

 隣にいた橋本も「やめろ。その話はやめろ」というような、ゴルゴ13のような目を僕に向けています。結局、冒頭の「……あのぉ、先日、尿漏れしまして」から急激に「……え~、今回僕が演じます須賀安吾という人はですね、非常に優秀な警察官であり」と、お前は情緒不安定かというような流れで挨拶を終えました。身も心もボロボロになって終えました。

 いやーホントに挨拶って難しいですね。そしてご同輩、尿漏れには気をつけましょうね。そして皆さん、「トクメイ」、観てくださいね。

 それでは皆さん、さにょうなら。

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