シンボルマークは「百年先も使う家紋になるもの」。必ず現場に行き、長岡さんと連携して生産者のもとを訪れて時間をかけて対話し、その農場の強みを見つけだし、半年かけて形にする。信頼関係の根っこにあるのは「農業に対するシンパシー」。今では全国80カ所の市町村で180以上の農場などのデザインを手がけ、付き合いが7年にわたる生産者もいるという。
農業に関わり、デザインの新たな可能性に気づいた。
「出来上がったシンボルマークを見て、『何かやれそうな気がしてきた』『背中を押してもらえた』と生産者の方々から言われて、デザインにこういう力があるんだと教えてもらいました。よくデザインしたら売れますかと聞かれますが、それは保証できない。しかし人のやる気が起きるという、魔法のような効果がデザインにはあると感じます」
デザインとは「前に進む力」。生産者一人ひとりの姿を思い浮かべ、声に力を込めた。(ライター・桝郷春美)
※AERA 2023年10月23日号