
屋形さんの運転について、
「自己管理がしっかりしていて、事故を起こさない」
と、統括運行管理者の髙根美由紀さんは太鼓判を押す。屋形さん自身も、
「イメージトレーニングが大切だと思いますね」
と返ってきた。
「車間距離をとろう、車線変更をするときは十分注意してウインカーを出そう、お客さんがいたら後ろの車に気をつけながら近寄って、ドアを開けるときは周囲をよく見よう、という風に、頭の中に描いてから出発するんです」
タクシーの事故件数は減っている
寿交通に勤務するドライバー84人の平均年齢は61.1歳。うち70代は15人、75歳以上は9人である。
「お客様の命を預かる仕事なので、乗務員の健康管理や安全指導は厳しくやっています」
と髙根さんは言う。
年2回の健康診断で悪いところが見つかれば、再検査や進行の状況などを追跡する。毎朝、出庫前にはアルコールチェックをし、さらに顔色を見たり、健康状態について尋ねたりしている。
「年齢を重ねると、動体視力が落ちてきたり、視野が狭くなってきたりするので、『首を使って確認してね』と声がけします」
そして、運転をアシストする機能がついた車が普及してきていることもあり、法人タクシードライバーの高齢化が進んでいる一方で、事故件数は大幅に減っている。
全国ハイヤー・タクシー協会によると、2012年に1万7750件あった人身事故が、21年には6486件まで減少(死亡事故は10件)。コロナ禍で乗務員が減ったことも影響していると思われるが、それを大きく上回る減り方だ。
定年のない運転手が3割弱
一方、運行管理者のいない個人タクシーは、安全をどう確保しているのか。
個人タクシーの年齢上限は75歳だが、あくまでも原則だ。上限が設けられたのは02年2月1日で、それ以前に営業許可を取得した個人タクシーに定年はない。
「その人たちは極端な話、何歳でもタクシーの運転ができる。それが個人タクシー全体の3割弱を占める」
と、全国個人タクシー協会の櫻井敬寛会長は説明する。