全国個人タクシー協会の櫻井敬寛会長

 協会によると、個人タクシーの事業者数は2万6788人(23年4月30日現在)。平均年齢は64.8歳で、法人タクシードライバーよりも高い。

 ところが、こちらも人身事故件数は激減している。12年は1415件だったが、21年は562件まで減ったのだ(死亡事故は1件)。
 

事故件数は減少傾向にある個人タクシー=個人タクシー協会提供

 個人タクシーの営業許可は最長5年だが、交通違反や事故を起こすとその期間は短縮される。最短は1年だが、これが5回繰り返されると、許可は取り消される。

 さらに75歳を過ぎると、営業許可は1年ごとの更新となり、そのつど健康診断や適性検査を通らなければ事業を継続できない。そして第二種運転免許を更新する必要があるが、奥行きの把握力を測る「深視力」の検査が通らずに廃業する人が多いのだという。
 

 個人タクシーが事故を起こすと、その情報は全国の協会支部に伝えられる。

「大きな事故だけでなく、小さな物損事故でも数が急に増えると、そのドライバーには支部に来てもらい、指導します。明らかに危険性が高い人に対しては『大きな事故を起こす前に辞めてもらえませんか』とお願いします。実際にそう言って辞めていただいた方が何人もいます」

 ただ、協会に未加入の個人タクシードライバー、全体の8.6%を占める2305人には、安全指導は届かないということになる。
 

求められている場所は「事業困難地域」

 今回の国交省通達の改正案では、75歳以上の個人タクシードライバーが過疎地域での営業をする場合、その区域の法人タクシーの運行管理を受ける、という立てつけになっている。

 観光バスの場合、出張先でスマホなどを使い、アルコールチェックなども含めた遠隔点呼が認められている。これがタクシーでも可能となれば、点呼を行う相手は遠隔地にいてもいいわけだが、それなりの設備投資が必要になる。
 

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