ベテランのタクシードライバーに「期待」が寄せられている

 住民の「足」が減っている過疎地域で、都市部で経験を積んだ個人タクシーのドライバーに働いてもらおうと、国土交通省は今月中に過疎地域での個人タクシーの営業を認めるとともに、運転年齢の上限をこれまでの75歳から80歳に引き上げる方針だ。高齢者の運転に、安全面での問題はないのか。そして、国の「思惑」通りにタクシードライバーは過疎地域の「足」となってくれるのか。

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 個人タクシーは原則として75歳までしか続けられないが、法人タクシーのドライバーにはこの上限がない。令和3年賃金構造基本統計調査によると、従業員10人以上のタクシー会社のドライバーは22万1849人。平均年齢は60.9歳(男性)で、70歳以上が全体の約2割を占める。

 その一人である屋形貞之さん(78)は、東京都三鷹市にある寿交通に勤めるベテランタクシードライバーだ。
 

 仕事は朝8時から翌日の深夜2時半まで。明けと休日を挟み、月8回ほど勤務する。

「会社を出発したら、朝一番で都心に向かいます。それから新宿、渋谷、青山を中心に車を走らせる。いわゆる『駅待ち』する人もいますが、私は運転が好きなので、いくら走っても苦にならないんですよ」

 屋形さんは、ひょうひょうと語る。

 歌舞伎町や銀座のような繁華街には、客から指定されないかぎり、自分から行くことはない。山手通りや明治通りなど、比較的走りやすい幹線道路をひたすら25年間、走り続けてきた。堅実な営業に徹しながら、平均以上の売り上げを維持してきたという。
 

 高齢の運転手であれば、体の健康状態が気になるところ。

「私、目はいいんです」

 と話す屋形さんだが、会社の指示ではなく、自ら半年に1度の頻度で眼科に行き、検査を受けている。さらに毎月1回は大学時代の友人と、体力維持を兼ねてハイキングに出かけるという。
 

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ドライバーは高齢化しても事故は減少