兄の想い、弟妹の願い

 炭治郎と実弥は、彼らにこんな想いを抱いていた。

「死なせないからな 絶対助ける 兄ちゃんが助けてやる」(竈門炭治郎/1巻・第1話「残酷」)

「お袋にしてやれなかった分も 弟や妹にしてやれなかった分も お前が お前の女房や子供を幸せにすりゃあ良かっただろうが そこには絶対に俺が 鬼なんか来させねぇから……」(不死川実弥/19巻・第166話「本心」)

 自分のために深い傷を負っていく妹と弟の姿を見て、これから兄たちは筆舌に尽くし難い悲しみを重ねることになる。この“二人の兄”は弟と妹を、それぞれに守りぬくことができるのだろうか。

 「鬼」と「人間」のはざまにいる2人が紡ぐ、悲しくも美しい物語を見届けたい。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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