人間のために戦う「鬼」の共通点

 禰豆子は炭治郎を、玄弥は実弥を助けること、守ることに心を砕いていった。大切な母と弟妹を殺した鬼を憎む立場でありながら、矛盾を抱えたまま、自ら鬼化を進行させていく。

 遊郭の鬼・堕姫との戦闘時、兄の命の危機を目にして、禰豆子は急激に鬼らしさを増していった。額にはツノ、上弦の鬼に匹敵するほどの肉体再生能力、堕姫の背中を容易に貫通できるほどの蹴りのパワー。徐々に人間らしさを失っていく。

 同じく玄弥は、実弥が鬼の上位実力者と対峙している際に、兄を救おうとして「鬼喰い」をさらに繰り返してしまう。

「鬼化が進んで無惨の声まで聞こえる… 俺の体…どうなっていくんだ…」(不死川玄弥/21巻・第171話「変ずる」)

 化け物へと変化していく恐怖を抱えながら、玄弥は自分の身を捨てることを決意する。

「やる やるしかねぇ 勝つことだけを考えろ 俺は兄貴を 師匠を 仲間を絶対死なせねぇ」(不死川玄弥/21巻・第172話「弱者の可能性」)

 玄弥と禰豆子は、兄のことを思う時、自分をかえりみることはない。「守る…みんなを守る…」その思いにのみ突き動かされて、自分もろとも「すべての鬼の死」に向かっていく。彼らの能力は、鬼を燃やすこと、そして鬼を喰うこと。鬼そのものを消滅へと導く力。「鬼の力」を宿しながら生きるという皮肉な道を与えられた彼らの行動には、自死の暗喩が含まれている。

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「兄ちゃんが助けてやる」