
かつてBBCの人気司会者だったジミー・サヴィルによる少年少女たちへの性虐待が、やはり死後に発覚しました。BBCは第三者に調査を依頼し、200ページにわたる調査報告書を出しています。そのくらいのことを日本のメディアもやるべきだと思います。なぜジャニー氏の性加害が裁判でも認定されたのに報じなかったのか、ジャニーズ担当は誰で、その人たちは問題を知っていたのか、知っていたならなぜ報じられなかったのかなど、きちんと調査し検証すべきです。膿(うみ)を出し切って初めて、メディアもスタートラインに立てると思います。
芸能界の中でもジャニー氏の性加害が問題視されなかったのは、ジャニーズ事務所批判というのがタブー視されていたからです。私自身も、4月にカウアン・オカモトさんが性被害を告発してからすぐ、私のユーチューブ番組でカウアンさんに話を聞きましたが、正直、テレビ局の仕事は来なくなるかもしれないと覚悟しました。ジャニーズのタレントも売れたかったら我慢するしかなく、やめたら一生干されるような状態です。これでは誰にも言えない。
社会も一体となって
全メディアが社内調査をしたら、ジャニーズだけでなく、他の芸能事務所に対するメディアの忖度(そんたく)や事務所の圧力も明らかになるはずです。ジャニーズに限らず、大手芸能事務所をやめたタレントは干され、それまでのような活動ができなくなることも多い。もしメディアが圧力に屈せず起用していたら、干されることはないですし、芸能事務所のガバナンスの悪さを報道していたら、被害者の方も声をあげていたかもしれません。
メディアの責任は重大ですが、ほかにもできることはあります。たとえば、芸能界で労働組合を作る、または、人権侵害が起きたときの救済などを担う国内人権機関があれば、被害者も助けを求められるかもしれません。メディアも社会も一体となってタレントの人権を守るということが必要だと思います。
(構成/編集部・大川恵実)
※AERA 2023年10月16日号