当然アドリブなし。言い回しを自分なりに変えるのもなし。原稿に忠実に、冷静な箇所は冷静に、熱を込めるところは熱を込め、一回の収録におよそ二時間。一人でスタジオに籠もり、マイクに向かう。それを五回やって、ようやくエピソードが完了。………メチャクチャ疲れる。落語やラジオの喋り方とはまるで違うので変なところに力が入り顔の筋肉がこわばって、まぁグッタリする。現在、私がやっている落語も含めたレギュラー仕事の中で一番消耗するのがこの「ビジネスウォーズ」。

 今まで配信されているのが、「ナイキ VS アディダス」「任天堂 VS ソニー」「ファストファッション戦争」「仮想通貨戦争」「トヨタ VS ホンダ」「マクドナルド VS バーガーキング」「スペースX VS ブルーオリジン」などなど……ずいぶんやったなぁ。仮想通貨やファストファッションなんてまるっきり意味不明なままなんとかやりきった。本田宗一郎やマーク・ザッカーバーグ、イーロン・マスク、カニエ・ウエスト(ナイキで登場)の声だけを演じたのは私くらいだろう。全員だいたいオッサンの声なのに、しれっとやるのだ。それを間や高低をちょっとずつ変えて、なんとなくごまかすのだ。ウソだと思ったら聴いてみて欲しい。トヨタの創業者とアップルの創業者、声だけ聴くとほぼ同じ人。

 恐らく今後もさまざまなエピソードが作られていくと思う。もっと和物があってもいいんじゃないか。「昭和53年 落語協会分裂騒動」とか「上野 VS 新宿 VS 浅草 VS 池袋 寄席の仁義なき集客戦争」とか「21人抜き抜擢真打昇進の闇」とか「柳家一門権力闘争」とか、そんな落語界の「ビジネスウォーズ」も取り上げて欲しい。誰も興味ない?

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ガリガリ噛ませてもらうでーな