山形県小国町の山の斜面で目撃された体長約70センチのツキノワグマ=2023年5月、山形県警提供(文中のクマとは関係ありません)

「双方が冷静に話し合うことが大事だと考えていますが、一方的に言われてしまい、それができない状況です」(担当者) 7月、北海道で牛60頭以上を襲った「OSO18」をハンターが駆除したが、勤務先の役場には抗議が殺到した。このときも道外からの抗議が大半だったという。北海道は公式エックス(旧ツイッター)で、

「ハンターが非難を受けることは、地域のヒグマ対策の根幹を担う捕獲の担い手確保に重大な支障を及ぼしかねません」

 などと、理解を求める異例の投稿をした。

「複雑な思いに……」

 クマの生息地である長野県の猟友会関係者は、率直な思いを話す。

「人に危害が及ばないように、やむなく駆除しています。抗議をする人は、具体的にはどうしてほしかったのでしょうか。人間を守るということをどう考えているのか。こうしたニュースを見るたびに複雑な思いになります」
 
 人とクマとの共生という難しい問題。動物愛護の思いがあったとしても、「責任者の名前を言え」などと強く迫ったり、ハンター個人を非難したり、クマとは無関係の抗議を長々としたりすることが、この難題を良い方向に導くのだろうか。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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