北海道斜里町のヒグマ=2022年4月(文中のクマとは関係ありません)

 秋田県美郷町が作業小屋に長時間立てこもっていたクマ3頭を駆除したことに対して、県や町に抗議が殺到している。県外からの抗議が多いといい、なかには九州などクマが生息していない地域の人からも。乱暴な言葉や電話先で泣き続ける人、話がそれてクマの駆除とは無関係の“抗議”を受けることもあるという。県自然保護課の担当者は「長い電話が多く、通常業務に支障が出ている」と疲弊を隠せない。

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 クマ3頭は10月5日午前、県と町が協議して、地元の猟友会が駆除した。作業小屋の付近には認定こども園がある。

「子どもたちが近くにいる場所です。クマの生息地に暮らしている住民の安全を守るために駆除したということを、ご理解いただきたいと思っています」(県自然保護課)
 
 今年はクマの目撃情報が例年以上に多いという背景もあった。

30分間の電話も当たり前

 ただ、駆除が報じられると県と町には抗議の電話やメールが殺到した。県自然保護課にもすでに数百件、美郷町にも500件以上の電話があり、6日朝も8時半の開庁から電話が鳴りやまない時間が続いたという。

「30分くらいの長い電話は当たり前といった状況です。職員が電話対応に追われ、通常業務に支障が出ています。私たちから電話を切ることはできません」(県自然保護課の担当者)

「なぜ山に帰さなかったのかとのご意見が目立ちますが、われわれもルールにのっとって駆除しています。今年、県内では熊による被害が多いこともあり、町民からは『安心した』との言葉をいただいている事実も知っていただきたいと思います」(美郷町の担当者)

 県も町も困惑している。

 大半は県外からだという。動物愛護の思いが強い人が目立つが、東京などクマの被害が極めて少ない地域や、クマが生息していない九州の人からの抗議も一定数あるという。
 
 また、「責任者の名前を言え!」などと乱暴な言葉で対応を迫る人も。対応した職員の言葉が気に入らなかったようで、「バカにしているのか!」などと怒りはじめ、クマとは無関係な職員の言葉遣いへの苦情に転じて電話を続ける人。電話先で泣き続ける人……。大声で強い言葉を発したり、「美郷町のものは絶対に買わない」と批判の矛先が別の方向に向いたりする声も届く。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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