言葉に救われる瞬間
――今年7月には、ソロ活動では初となるワンマンツアー「SKETCH」を開催。愛知、大阪、神奈川の3カ所を巡り、全国のファンを沸かせた。
幾田:ソロライブ自体約4年ぶりだったんです。2020年の初めにライブをして以来、ご時世もあってできなくなってしまって。その間に自分を取り巻く状況も本当に大きく変わったので、正直ツアーをやる前はどんな反応があるのか全く想像がつきませんでした。「本当に私のオリジナル曲を聴きにきてくださる方がいるのだろうか」と……。だから、いざステージに立ってお客さんを目の前にしたときは、「本当にいたんだありがとう!」ってものすごい感謝の気持ちがこみ上げてきました。
それからソロで歌ってみて、やっぱりYOASOBIの「ikura」と「幾田りら」では、“しっかり違うんだな”と実感できました。自分の言葉とメロディーで歌うことに説得力を感じることができたというか、歌いながら自分の言葉に救われる瞬間が何度かありました。「どちらがいい」ということではなくて、「どちらも自分でどちらも必要なんだ」って改めて思えたんです。YOASOBIの場合は、小説を音楽にするという前提がまずありますし、曲を書いているのがAyaseさんなので、やはりソロのときとは土台が違います。小説の世界観や主人公の目線で歌うことと、自分の人生や経験そのものを歌うことは、軸が大きく異なるので。だから歌い方やライブのパフォーマンスも、意図して技術的に変えているというよりは、表現したいものを突き詰めた結果として自然に変わっている感じはありますね。
(ライター・澤田憲)
※AERA 2023年10月2日号より抜粋