(c)2022 Fashion Reimagined Ltd
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 2017年4月、英国最優秀新人デザイナーに選ばれたエイミー・パウニーはブランドをサステナブルに移行する決心をする。だがなかなか理想の素材に出合えない。果たして無事にコレクションを発表できるのか? 地球環境に悪いファッション業界を変革する試みを追うドキュメンタリー「ファッション・リイマジン」。プロデューサーも務めたベッキー・ハトナー監督に見どころを聞いた。

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 2017年、ロンドン・ファッションウィークの取材でエイミーに出会いました。彼女は「畑から完成した衣服まで、完全にサステナブルなコレクションを立ち上げたい」と話してくれました。私は11年に海洋問題や気候変動のドキュメンタリーを編集して衝撃を受け、サステナビリティーに気を使うようになっていたんです。彼女の挑戦を追うことを決めました。

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 撮影はすべてが驚きでした! ファッション業界がどれだけ環境に負荷をかけているかを知ったのです。1年間に作られる服は1千億〜1500億点もあり、その5分の3が購入の1年以内に捨てられます。しかも衣服の40%は注文ミスなどで店頭に並びません。デニムパンツ1本を生産するために使う水の量1500リットルは1人の人間が飲む2年分の水に相当します。製造や輸送による二酸化炭素排出量も莫大です。地球温暖化というと「交通手段をなんとかしなきゃ」などと思いがちですが、この業界こそ変革が必要なのです。

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 エイミーは学生時代から問題意識を持ってきました。いっそこんな業界を離れ、非営利団体に入ることも考えたそうです。でも人はどうしたって新しい服を欲しがる。ならば業界を内側から変えようと思い直し、挑戦を続けています。

ベッキー・ハトナー(監督・プロデューサー)Becky Hutner/カナダ・トロント出身。ファッションやカルチャーの短編映画制作や、環境問題をテーマにしたドキュメンタリーを編集。全国順次公開中 (c)2022 Fashion Reimagined Ltd

 撮影時に比べてファッション業界に問題意識を持つ消費者は確実に増えました。レンタルや交換、リペアなど循環型マーケットのアプリも急成長し、30年にはファストファッションの成長を凌駕するだろうと言われています。しかしいっぽうで「シーン」のような通販サイトが大流行している状況にはがっかりです。いまも日々、数千着もの新しい服が売り出されている。ファストファッション・モンスターはどこからともなくやってくる脅威なのです。

(取材/文・中村千晶)

AERA 2023年10月2日号