環境、教育、福祉など社会問題の解決につながる社会的インパクトを、投資先の決め手にしようという動きが起こっている(撮影/写真映像部・東川哲也)
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 投資先の決め手となるのは、リスクとリターンだけでない。第3の物差しとして、社会問題の解決につながる社会的「インパクト」が注目されている。社会にいい影響を与えている「いい会社」に投資する魅力とは。AERA 2023年10月2日号より。

【図表】個人が買えるインパクト投資商品の例がこちら

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 米国でリーマン・ショックが起こった08年、まだインパクト投資という言葉が存在しなかった日本でも、「いい会社」にだけ投資する小さな運用会社が誕生している。鎌倉投信だ。

 販売している投資信託は「結い2101」と呼ばれる1種類のみ。国内の「いい会社」約70社の株式を詰め合わせた投資信託で、1万円からの購入も可能だ(積み立て購入は月5千円から)。創業者の鎌田恭幸社長は、米国の大手資産運用会社の副社長を辞めて鎌倉投信を創業した。同社の投信企画部長齋藤圭也さんは言う。

「経済性だけを追う投資は社会のためになるんだろうかという鎌田の疑問から始まった投資信託です。投資先の約70社には、『途上国から世界に通用するブランドをつくる』という理念を掲げバッグ等の製造販売をしているマザーハウスなど、公募投資信託では扱われにくい非上場企業のほか環境コンサルなどを手がけるアミタホールディングスや地域雇用の創出などを評価した亀田製菓といった上場企業も名を連ねています」

 年1回の総会では、投資先の企業を招いた講演なども開催、また投資先の工場やオフィス見学会を開催するなど、投資信託を購入した投資家と投資先の企業とのつながりも大切にしている。

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