指原の特徴は「自我がない」

 キャリアを重ねながらキャラクターをコロコロ変えているようにも見えるが、本質的なところはそれほど変わっていない。

 指原のタレントとしての特徴は「自我がない」ということだ。徹底して無味無臭であり、強い個性を感じさせるようなものがない。いわば、特徴がないことが最大の特徴である。

 芸能界では、他人を押しのけてでも前に出るような自我の強い人が多い。どこまでも自分の言いたいことを言い、やりたいことをやり、芸を磨き、個性を磨き、華やかなスポットライトを浴びることを望む。芸能人とは、多かれ少なかれそんな自己顕示欲の塊のような人間である。

 しかし、指原にはこれといった確固たる信念がない。主張したいことも何もない。その場の空気に合わせて、それっぽいことを言い続けているだけだ。でも、実はそれこそがバラエティ番組で求められる資質でもある。

 明石家さんまは、話を振られたときのリアクションが悪い共演者に対して「打っても響かん太鼓やね」と言うことがある。その表現を借りるなら、指原は実によく響く。どんな球を投げられても即座に打ち返す。それができるのは、彼女が自分らしさにこだわらず、ただ他人の顔色をうかがって求められる正解を返すことだけに徹しているからだ。

レジェンド女性司会者との違い

 しかし、番組を背負う司会者はそれだけでは務まらない。黒柳徹子、和田アキ子、上沼恵美子など、レジェンド級の女性司会者はほぼ例外なく強烈な自我を持っていて、空気を読まず自分の思うことを堂々と発信する。それが彼女たちの魅力になっている。

 指原の『ゼロイチ』が今ひとつ軌道に乗らなかった理由の1つはそこだろう。生放送の情報番組を単独で仕切る女性司会者に求められているのは、「無難な正解」ではなく「いびつな不正解」だったのではないか。

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